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管尻の切断

管尻の切断

切断長さを計算する

管尻切断の手順

筒音を正しく出すために長尺D管の本体管尻を切断します。
調律器で現在出ている音程を測定し、λ/2から切り取る長さを計算して切断します。
しかし誤差も生じますので切り取りは少し短めにしておき、何度も繰り返しながら徐々に正しい長さに近づいていきます。

標準温度の設定
同じ尺八でも温度が違うと音程が違ってきます。
ですから、自分は室温何℃において正しい音程となる尺八にするか、その温度を自分なりに設定しなければなりません。
20℃とされる方もおられるでしょうが、私は自分の好きな生活温度を考えて、「標準温度を25℃」に設定しています。

管尻切断前の初期状態
作成時の実例をお話ししましょう。
歌口が完成しましたので、手孔の開いていない素通しの状態で吹いてみました。
調律器はC+40を示しました。この時の室温は20℃でした。
ここでC+40と記しましたが、これはCプラス40セントの意味で、CとC#の間のCからC#にむけて40%の所にあたる音程を示しています。

上述のように、室温20℃で吹いてみたらC+40だったのですが、これは開口端効果を含めた全長Lがどれだけだと言っているのでしょうか。
Cの周波数は130.8で、C#は138.6です。
20℃における音速から計算すると、これらのλ/2はそれぞれ、1313.7、1240となります。
CよりもC#のλ/2は小さくなります。

C+40はCからC#へ40%の所と言うことです。
40%は0.4ですから、C+40のλ/2は (1240-1313.7)*0.4+1313.7=1284 です。

いま出来ている状態では、
開口端効果を含めた全長はL=1284mmとなります。

目標とする全長
通常の尺八より1オクターブ低いDの音の周波数fは146.8Hzですので、音速vを求め、周波数fで割り算するとその温度の時の波長λが求められます。
尺八は両端開口ですのでλ/2で共振します。
標準温度の25℃においては 音速はv=331.5 + 0.61*25=346.8(m/s)ですから、
乙ロDの音の周波数は146.8Hzです。
音速を周波数で割り算して波長λを求め、これを2で割れば
λ/2=346.8*1000/146.8/2=1181mmとなります。

すなわち、開口端効果を含めて全長L=1181mmになればよいということです。
これが目標となる全長Lです。
このLは頭頂から管尻までの実際の長さではありません。開口端効果を含めた値になります。

切断長さの計算
目標は全長L=1181mmと計算されましたから、
1284-1181=103mm
管尻を切ってしまえばよいわけです。

しかしそう簡単に行かないかもしれませんので、まずは半分ほど、52mm切り落としてみます。
そうして再度吹いてみますとC#+5となりました。

同様に計算しながら徐々にカットしていきました。
現在の室温はまだ20℃ですのもう少しだけ短くする必要がありますが、
最終的には室温を25℃にして確かめてから切ることにしました。

標準温度においての最終切断
室温を標準温度である25℃にして、調律器で見てみますと、D-15でした。
あと15セントだけ上げなくてはなりません。
25℃のD、C#のλ/2は1180.8、1251ですのでその差の-15%は-10.53mmです。これを-11mmとします。
このように、あと11mm切断することと計算されましたので実行し、頭頂から管尻まで長さを1063mmとしました。
恐る恐るですが室温は25℃であることを確認し、吹いてみますと、ピタリD±0となりました。

実際の管の全長は1063mmですが、L=1181mmとして振舞っているわけです。
この差 1181-1063=118mmは、歌口と管尻の開口端効果によるものです。
次ページで歌口と管尻の開口端効果を算定します。



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